2019年6月30日 サンデーモーニング(前編)

2019年6月30日 サンデーモーニング(前編)

サンデーモーニング、2019年6月30日分の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
① 大阪で開かれたG20について報道された部分
② 「風を読む」にて日米安保について報道された部分
③ 沖縄慰霊の日について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

前編で検証するのは、
① 大阪で開かれたG20について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約①】
 メルケル首相とプーチン大統領が来日する映像とともに、最大規模の首脳会合が行われたと伝えられる。安倍首相が「ウィンウィンで持続可能な世界を実現するサミットにしたい」と述べる映像が流される。

【アナウンサーによるパネル説明①】
・G20大阪サミットは、新興国を含め37の国と地域、国際機関が参加して行われる金融・世界経済に関する首脳会合
・トランプ大統領が就任した2017年には、パリ協定に関して協調姿勢を打ち出すことができなかった
・2018年は、開催以来謳ってきた「保護主義と闘う」という文言を初めて首脳宣言に盛り込むことができなかった

【VTR要約②】
 G20についての記者会見で、安倍首相は大阪ブルーオーシャンビジョンの推進、大阪トラックの開始を成果として挙げたが、「保護主義と闘う」という文言を首脳宣言に盛り込むことは断念したと伝えられる。一方、米露首脳会談や米中首脳会談など2国間協議が注目されたとナレーション。米中は互いにけん制しあう発言があったものの、アメリカが追加関税の検討を見送る等、米中の全面的な貿易戦争は避けられることになったと伝えられる。

【アナウンサーによるパネル説明①】
・トランプ大統領は、追加関税を先送りすることを決め、これまで禁止していた米企業のファーウェイへの部品供給を容認する方向だと話した
・「国ぐるみの産業助成」の見直しを要求する一方、中国は「中国の主権の問題」と説明している

【コメンテーターの発言】
寺島実郎氏(要約):元々G20は、強欲なウォールストリートが引き起こした金融危機(リーマンショック)にどう立ち向かうかというところが原点。いま、金融資本主義の肥大化はより深刻なぐらい信仰しているのにもかかわらず、その問題が一切議論されていない。米中が2か国で、世界秩序を仕切ろうとしている。日本としては、しっかりとした主張と立ち位置をもっていかなければだめだ。

目加田説子氏(全文):先ほど、手作りフリップでご説明戴いた通り、20の国が集まって、しかも世界の大国ばかりが集結するということで、一般的な感覚からすれば、なんかとても大事なことが話し合われて、決まるんじゃないか。私達の生活にも直接影響が及ぶような、何か決まるんじゃないかという期待を込めて、思うと思うんですが、過去のその2008年以降、10年以上やっていて、何か目覚ましい成果が生まれたことがあるかっていったら、実はないんでよすね。はい。ですので、このG20っていうものの、そのものの意義っていうものを、今改めて、問い正すというか、考え直さなきゃいけないんじゃないかなというのが一つの感想としてあります。ただ、世界のトップの首脳が集まる場ですので、マルチで、多国間の協議という以上に、今日のニュースのように、例えばトランプさんと習近平さんの会談のように、バイで、もう本当にたくさんのバイの二国間協議というのが行われているので、そういった場で、いろいろさまざまな議論が行われることは決して悪いことではないと思うんですが、ただG20そのものの意義っていうのは、当初期待していたものは、もう既にないのではないかなというのが印象です。

藪中三十二氏(要約):元々G7は先進民主主義国家の集まりで、いろいろ丁々発止の話ができるが、G20では数が多すぎてスピーチ合戦になってしまう。立場があまりにも違う国が集まっているのも問題。

谷口真由美氏(全文):G20をやってた大阪に暮らしてる人間からするとですね、生活者の目線で言うと、実はうちの子ども、小学校と中学生なんですけれども、木金って学校休みになったんですよ。で、木金と学校が休みになったってことで、保育所が休みになったりして、5月の頭に10連休があって、今回また連休になったっていって、日当で働いてる人達が、本当にお金を稼げなくなったんです。これが経済を話し合う会議によって、我々生活者は、経済的なことっていうのが苦しくなるっていうことがあって、大阪に対して経済効果が300億あるっていうような試算があるシンクタンクから出てたんですけど、でもマイナス効果もありますよねっていうことは、結局ね、国家間の枠組みの話だけじゃなくて、私達生活者が、どれだけこの話に関係してるのかみたいなことは出てこないですし、もっと言うと、大阪の人は大阪がアピールできるんだからっていうんでもう、戒厳令みたいだったんです。もうほんと高速は止まるは、物流は止まるは、宅配は来ないはみたいな感じだったんですけど、だったらその、それだけのことをやって大阪がアピールできてよかったねみたいなことをいうんですけど、そんなアピール多分なってないと思うんですよね。大阪的なものがアピールできてないんじゃないかなって私なんかは思うので、それでいうと、そういった生活者がしんどいんだってことをもっと報道していただきたかったなって気はします。

松原耕二氏(要約):日本がアメリカに耳の痛いことを言えず、トランプ大統領への配慮ばかりが正直目立つような気がする。環境問題に関してヨーロッパはG20で決まったことよりも、はるかに野心的なことをやっている中で、日本の背骨、日本はどんな価値を大事にする国なのかが見えてこなかったのが残念。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、目加田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、谷口氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、目加田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
目加田氏は今回の報道で、以下のように述べています。

目加田氏(抜粋):20の国が集まって、しかも世界の大国ばかりが集結するということで、一般的な感覚からすれば、なんかとても大事なことが話し合われて、決まるんじゃないか。私達の生活にも直接影響が及ぶような、何か決まるんじゃないかという期待を込めて、思うと思うんですが、過去のその2008年以降、10年以上やっていて、何か目覚ましい成果が生まれたことがあるかっていったら、実はないんでよすね。はい。ですので、このG20っていうものの、そのものの意義っていうものを、今改めて、問い正すというか、考え直さなきゃいけないんじゃないかなというのが一つの感想としてあります。ただ、世界のトップの首脳が集まる場ですので(中略)多国間の協議という以上に(中略)例えばトランプさんと習近平さんの会談のように(中略)二国間協議というのが行われているので、そういった場で、いろいろさまざまな議論が行われることは決して悪いことではないと思うんですが、ただG20そのものの意義っていうのは、当初期待していたものは、もう既にないのではないかなというのが印象です。

要旨をまとめると、
・G20は世界の大国が集まって大事なことが話し合われているような錯覚を覚えるが、実は私たちの生活に直接影響が出るような目覚ましい成果が生まれたことはない
・二国間協議のきっかけになることは良いことだが、G20そのものの意義は改めて考え直す段階にきている

というものです。

しかしながら、
・G20は国際的な金融政策・経済政策について足並みをそろえるために行われるもので、直接的なアウトプットなどという形以上に国際的な協調という形で成果が出ている。
・したがって、世界の大国が大事なことを話しているというのは錯覚だという主張や目覚ましい成果を出したことがないという主張、国民の生活に大きな影響を与えていないという主張は明らかに事実に反している。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での目加田氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、谷口氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
谷口氏は今回の報道で、以下のように述べています。

谷口氏(抜粋):G20をやってた大阪に暮らしてる人間からするとですね、生活者の目線で言うと、実はうちの子ども、小学校と中学生なんですけれども、木金って学校休みになったんですよ。で、木金と学校が休みになったってことで、保育所が休みになったりして、5月の頭に10連休があって、今回また連休になったっていって、日当で働いてる人達が、本当にお金を稼げなくなったんです。これが経済を話し合う会議によって、我々生活者は、経済的なことっていうのが苦しくなるっていうことがあって、大阪に対して経済効果が300億あるっていうような試算があるシンクタンクから出てたんですけど、でもマイナス効果もありますよねっていうことは、結局ね、国家間の枠組みの話だけじゃなくて、私達生活者が、どれだけこの話に関係してるのかみたいなことは出てこないですし、もっと言うと、大阪の人は大阪がアピールできるんだからっていうんでもう、戒厳令みたいだったんです。もうほんと高速は止まるは、物流は止まるは、宅配は来ないはみたいな感じだったんですけど、だったらその、それだけのことをやって大阪がアピールできてよかったねみたいなことをいうんですけど、そんなアピール多分なってないと思うんですよね。大阪的なものがアピールできてないんじゃないかなって私なんかは思うので、それでいうと、そういった生活者がしんどいんだってことをもっと報道していただきたかったなって気はします。

要旨をまとめると、
・G20はその開催によって大阪の小中学生を休みにしたり、日当で働く人がお金を稼げなくなったりと、「生活者」の経済を苦しめた
・G20の経済効果が300億円あるという試算があるが、こういったマイナス効果も存在している
・G20は国家間の枠組みの話に終始しており、「生活者」がどれだけ話に出ているか分からない
・大阪はG20の開催で高速が止まる、物流は止まる、宅配が来ないなど、戒厳令の様相を呈していた。したがって大阪のアピールになったとはとても思えず、生活者がしんどかっただけだ

というものです。

しかしながら、
・「生活者」の正確な定義が示されておらず、非常に偏った一部の人間のみを取り上げているため、主張として事実に即したものとはいえず、また政治的な平性に欠ける。
・G20開催によって日雇い労働者がお金を稼げなくなったという主張に根拠がない。
・G20の「マイナス効果」について、経済効果として挙げられた300億円に匹敵するデメリットがあるという根拠が示されていない。
・G20で扱われる金融政策・経済政策は当然生活困窮者の生活にも影響を与えるため、ただ無為に生活者の生活を苦しめるだけに終わったという主張は事実に反している。
・高速道路や道路の通行止めに関しては警備の観点からやむを得ないものであり、事前に告知がなされている。また鉄道や一般道、小売店やは通常通り運行・営業しており、したがって戒厳令のようだという主張は明らかに事実に反している。
・大阪は今回のサミットを通して「世界で注目される日本の中心地(フィナンシャルタイムズ紙)」「景気に沸く都市(ウォールストリートジャーナル紙)」として紹介されており、大阪のアピールになっていないという氏の主張は明らかに事実に反している。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での谷口氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「G20はもう役目を果たしていない」「米中2国だけでなく日本も明確な立場を示すべきだ」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「先進国の経済政策の足並みをそろえるG20は非常に重要だ」「アクターは米中だけでなく多岐にわたる」「日本は議長国として十二分に役割を果たしている」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では、政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② 「風を読む」にて日米安保について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

③ 沖縄慰霊の日について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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